福岡県済生会二日市病院

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睡眠医療センター

中枢性過眠症

過眠症という疾患は、睡眠時無呼吸症候群やそのほかの明らかに睡眠を悪化させる原因がないのに強い眠気を生じる疾患です。睡眠障害の国際分類では下記のように分類されています(一部省略)。

1. ナルコレプシー タイプ1
この疾患は、わが国では人口の700人に1人程度いると考えられ、それほど珍しい疾患ではありません。患者さんは、昼間の繰り返す強い眠気が長期間続くことをきっかけとして受診されます。タイプ1の患者さんの特徴は、昼間に笑ったりした際に全身の力が抜ける発作(情動脱力発作)を伴うことです。また、眠りに入る際に金縛り状態になったり、悪夢を見たりすることも特徴です。眠気や脱力の程度は患者さんごとに様々です。夜の睡眠中は、昼間眠気が強いのに何回も起きることも多く、つまり、覚醒と共に睡眠の状態も不安定なものとなっています。発症は典型的には10歳から25歳の間の若い世代です。35歳くらいにも多くなるという報告もあります。この疾患では、脳内のオレキシンという覚醒や睡眠を安定化させるホルモンが低下していることが分かっており、この濃度を測って診断することもあります。
この病気になると仕事や日常生活に大きな支障が生じることになり、自動車事故や試験での失敗などにもつながります。適切に診断して治療を行うことが重要です。診断がつけば、覚醒を促すような薬物で加療を行います。多くの患者さんでは、十分な効果を得られて問題なく日常生活を送られています。
2. ナルコレプシー タイプ2
タイプ2では、上記の情動脱力発作を伴わないのが特徴です。ナルコレプシー全体の15-25%程度と考えられています。情動脱力発作が伴わないこと以外の症状はほぼ同様です。このタイプでは覚醒に重要なホルモンであるオレキシンの濃度の低下は軽度またはないのも特徴で、オレキシンはあるけれどもその作用する場所に問題がある可能性も考えられています。
3. 特発性過眠症
この病気もナルコレプシーのように、昼間の眠気が中心となりますが、ナルコレプシーの場合に認められる睡眠の初期のレム睡眠が認められないことが特徴です。ナルコレプシーの患者さんでは睡眠時に途中で目が覚めることが多いのですが、特発性過眠症の患者さんでは寝続けていられるところが異なります。
4. クライネーレビン症候群
この病気は、非常にまれで100万人に1-2人程度の発生と考えられていますが、眠気が強くなることが1年に1回以上生じて、それが10日間程度続いて、その後元に戻ります。この眠い期間には、排泄と食事以外は寝てばかりいたりします。また、それと共に認知機能が低下したり、夢の世界の中にいるような感覚に襲われたりします。また、異常な食欲・性欲や不安感、幻覚なども生じます。しかし、ある時期を経ると眠気もなくなり、感覚もすっかり元に戻るというのが特徴です。今のところ原因は不明です。
5. 身体疾患による過眠症
脳の疾患(代謝異常・脳卒中・脳炎・脳腫瘍・頭部外傷・神経変性疾患など)・全身の炎症(リウマチ・ガン・慢性感染症など)に伴って、異常な眠気が出ることがあります。
6. 薬物または物質による過眠症
睡眠薬・アルコールなどで眠くなることはどなたもご存じですが、その他に消炎鎮痛剤・抗生物質などでも眠気が生じることがあります。また、定期的に飲んでいるコーヒーなどカフェイン飲料を急にやめると2-9日間ほど眠気・疲労感・注意不足を引き起こすことがあります。
7. 睡眠不足症候群
こうした病名があることを不思議に思われる方も多いと思います。睡眠不足であれば眠くて当たり前だからです。しかし、実際の臨床では、眠気を訴えて来院される方によくお話を聞くと、例えば毎晩5時間程度しか寝ていないといったことも珍しくありません。日本人は、世界一睡眠時間が短いことが知られています。特に週末、用がない時にウイークデイより2時間以上長く寝るようなことがあれば、日頃睡眠不足であることが疑われます。また、人によって必要な睡眠時間は異なります。最近では、ベッドの中のスマホ操作が多くなり、これによって睡眠時間が短くなっているケースが多く見られます。

孤発症状と正常範囲の異形:長時間睡眠者

長時間睡眠者、と言われる方は、9-10時間以上寝ないと眠気が生じます。長く寝れば眠くないとはいえ、生活のパターンから毎日9-10時間の睡眠時間が取れない場合も多く、病気と正常の間のような状態と考えられます。