福岡県済生会二日市病院

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睡眠医療センター

睡眠関連運動障害

1. ムズムズ脚症候群
ムズムズ脚症候群は、現在国際的には発見した先生方の名前を用いて「ウィリス・エクボム病」と呼ぶことが標準になっています。この病気では、以下のようなアレンの4徴と呼ばれる症状があります。ただし、症状は脚だけに生じるとは限りません。
 ① 脚に不快な感覚がおこり、脚を動かしたくてたまらなくなる、
 ② 安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または増悪する、
 ③ 脚を動かすと、不快な感覚がやわらぐ、
 ④ 夕方から夜にかけて症状が強くなる、
これら4つの症状があること、そして、これらの症状がほかの病気で起こっているのではないことを確認して診断します。患者さんは、こうした感覚が強く起こり睡眠に入るのが困難になり、寝れないために夜中に何度も起きては足を動かしてからまたベッドに戻るようなことを繰り返して寝不足となり、翌日の生活に支障が出るようになります。程度の差はあれ人口の5-10%にムズムズ脚症候群の患者さんと考えられており、特に妊娠中や腎不全の方ではこの疾患が増えることが知られています。原因として、鉄に関連する脳の一部分の働きが低下していることが考えられており、体内の鉄が不足して生じていることもあるため、まず鉄やその関連ビタミンの不足の確認を行い、こうしたものが不足してなければいくつかの薬物の中から、その患者さんに合ったものを投与します。

2. 周期性四肢運動障害
何とも聞きなれない病名ですが、まず、周期性四肢運動というのは、足、特に足の親指や足首が定期的に動く状態が1時間に5回以上あることを指します。この時の足の動きは、典型的には足の親指が後ろ側に反り、これが0.5-10秒ほど持続します。これ自体は問題ではないのですが、これが睡眠を妨げられていることと関連しており、昼間に眠気等の症状を起こす状態を周期性四肢運動障害と呼んでいます。一般に、このように足の動くことは若い人では非常に少ないのですが、加齢に伴って増加し、高齢者では45%の人で夜間に足が動いているという報告もあります。また、一つ前のムズムズ脚症候群の患者さんでは、周期性四肢運動障害を80-90%という非常に効率に合併していることが知られています。患者さん自身には、足の運動で起きている自覚はなく、なぜか昼間眠い、という症状があります。
この病気の診断方法ですが、まず、昼間の眠気を生じる他の病気がないかを十分調べて、もし例えば睡眠時無呼吸症候群などがあればそれを十分治療を行ったうえで一晩の睡眠検査(終夜ポリソムノグラフィー検査)をおこない、足の動きに伴う覚醒が生じており、それが翌日の眠気の原因となっていると考えられる場合にこの病気と診断されます。
治療には薬物を用いますが、薬物が効けばよく眠れて翌日眠くなくなります。

3. 睡眠関連下肢こむら返り
夜間に足がつることですが、高齢の方には良く見られます。ある報告では、60歳以上の成人で毎晩下肢のこむら返りが生じる人が6%であったとのことです。糖尿病、激しい運動や立ち仕事のあと、脱水などでも生じやすくなると言われています。また、利尿薬、βブロッカーと言われる心臓病の薬、スタチンと言われる悪玉コレステロールを下げる薬とも関連すると言われています。かなりの痛みを伴うため、患者さんは、また起こるのではないかとの恐怖心で不眠になることもあります。芍薬甘草湯という漢方薬などが発症を予防する効果があります。

4. 睡眠関連歯ぎしり
歯ぎしりは、ギリギリと音をたてる症状としてどなたもご存じかもしれません。実は歯ぎしりにはいくつかの種類があり、ぐっと噛みしめるだけで必ずしも大きな音を立てないものも含まれます。睡眠中の歯ぎしりは幼児では14-17%に起こっているといわれ、成長と共に消失することが多いので特に治療が必要とは考えられていません。一般に加齢とともに有病率は低下すると言われていますが、成人における歯ぎしりで問題になるのは、、過剰に歯がすり減ったり、起床時に顎の筋肉痛や関節痛を起こしたりする場合です。また、歯ぎしり音によってベッドパートナーの睡眠が妨げられる場合もあります。睡眠中に歯ぎしりをする場合には、何らかの原因で自覚しない程度の覚醒に引き続き歯ぎしりが始まることが多いと言われています。歯ぎしりの原因は充分には解明されておらず、止める方法は確立されていませんが、歯のすり減りや歯ぎしりの音が問題になる場合には歯や顎を守るために歯科でマウスピースを作成します。これは前述の睡眠時無呼吸症候群のために使用するマウスピースとは形も目的も異なるものです。歯ぎしりのためのマウスピースは睡眠時無呼吸症候群を悪化させるとの報告もあるため、使用に際しては無呼吸の有無を確認することが大切です。一方で、睡眠時無呼吸症候群に伴って歯ぎしりが生じる場合もあり、この場合には睡眠時無呼吸症候群の治療を行うと自然に改善される場合があります。