福岡県済生会二日市病院

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睡眠医療センター

睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)

睡眠時無呼吸症候群は睡眠呼吸障害という病気の中の一つですが、中でも、一般の方が思われる、ひどいいびきがして息が止まるというタイプの閉塞性睡眠時無呼吸が最も多い疾患です。ここでも、こうした状態を中心に説明します。わが国の中年以上の男性では、重症の睡眠時無呼吸が13%程度、女性で4%程度いるものと考えられています。この病気では、頻回に息が止まり血液中の酸素濃度が下がることにより生じる眠気と体への負担が問題となります。息が止まったままになると酸素濃度が下がってしまうことから、苦しさで一瞬目が覚めて呼吸をして、また寝ることを繰り返しています。このため、深く寝ることができず、熟睡の少ない睡眠となり、朝目覚めてもボーとしていたり、頭が痛かったりします。その結果、交通事故率が上がったり、集中力低下のため仕事の能率が下がったりするようになります。重症の方では、重要な面談の最中に相手の目の前で寝てしまうことさえ生じます。表にあるような症状があれば、一度相談していただければと思います。

一方、睡眠時無呼吸症候群では、頻回に低酸素・高二酸化炭素状態に陥り、また、十分な睡眠がとれないなどの影響で、夜間に血圧や脈が頻回に上昇したり、緊張状態が続いたりすることもあり、夜間の不整脈発生、昼間の血圧上昇、動脈硬化の悪化などが生じると考えられています。睡眠時無呼吸症候群があればすぐ心臓や血管が悪くなるわけではありませんが、重症な方では、こうした危険性があると考えて診療を行っています。

診療の流れ

1. 問診:表のような症状をお聞きし、眠気の点数化をします。また、鼻詰まりや歯の具合などもお聞きします。
2. 身体診察:のどなどをチェックし、扁桃腺が大きくないかなどを診察します。
3. 簡易検査:自宅で行う睡眠中の呼吸の検査をまず行います。厚生労働省の規則で、入院して行う詳しい検査を行う場合でもその前に、簡易検査を行って入院検査の必要性を確認する必要があります。
4. 入院検査:当院では夕方来院していただき、翌朝早く帰る検査にしていますので、お仕事や学校にもそれほど差し障らないと思います。
5. 結果説明時に鼻の通りの検査を行います。これは睡眠時無呼吸症候群の原因を見るということと、その後の下記のCPAP治療時の問題点があるかないかについての情報を得るために行っています。
6. 治療の選択:治療には以下のものがあり、患者さんの状態やご希望に応じて選択しています。
(ア) CPAP(シーパップ:Continuous Positive Airway Pressure):いわゆるマスク治療です。中等症以上の重症度の患者さん、主にCPAPから治療を開始することが多くなります。マスクの種類は多く、患者さんにあったものを探すことも重要です。CPAPでは空気を送り込むことで、喉の奥のつまりを取ります。現在使用しているようなタイプの機器では、音も非常に静かになっており、装着感も以前のものと比べて改善しています。使用はレンタルになっており、3割負担の方で、月額おおむね5000円です。原則として毎月来院していただき、使用状況を確認し、必要があれば変更を行ったり指導を行ったりします。

(イ) マウスピース治療
 歯科に依頼して患者さんに合わせて作成してもらいます。マウスピース治療の原理は、下あごを前にずらして、舌の後ろにスペースを作ることです。保険診療で約15000円となり、2-3回の通院で作成できます。原則として、軽症からやや重症の方までが適応ですが、非肥満の方により有効と言われています。当院では、作成後に効果確認の目的で、自宅でできる簡易呼吸検査を行います。
(ウ) 体位治療
 非肥満の方では、横向きになることで軽症化することがよくあります。このような方で、元来軽症であることが判明した場合や他の治療方法が使えない場合などでは、横になりやすい寝具や装置のご紹介を致します。
(エ) 舌下神経刺激装置
最近日本でも認可された治療法です。胸の皮膚の下にペースメーカーのような装置を埋め込み、呼吸の動きをモニターします。寝る時にスイッチを入れると、息を吸ったことを検知すると、電気信号を出し、舌の中に入れた電線を通じて舌下神経の中でも舌を前に出す神経を刺激して舌を前に出すことで、舌の後ろにスペースを作り呼吸ができるようにします。令和5年時点では、九州ではまだ行われていませんが、準備が始まっています。ただし、高度の肥満の方(BMI>30)では効果が少ないため適応がありません。